2008年06月10日 16:43

邪宗まんが道 - 松永豊和

小学館の漫画原稿紛失問題から導かれ。

■ 漫画のカラー原画紛失!作者が小学館提訴…週刊サンデー「金色のガッシュ!!」(報知/Yahoo)

週刊少年サンデーで長期連載され、アニメ化もされた漫画「金色のガッシュ!!」のカラー原画を紛失されたとして、作者の漫画家・雷句誠(本名・河田誠)さん(33)が6日、出版元の小学館に330万円の賠償などを求め、東京地裁に提訴した。

もう小学館では書かない宣言も含めて、雷句誠と小学館との確執、そこに加えて他の漫画家からの応援コメント、それに対する非難コメントなど、これを切っかけに漫画界の隠されていた闇について議論が、公の目の前で起こりつつあるようです。

これらの件について書かれたニュースやブログ等を巡っていて、竹熊健太郎「たけくまメモ」(Link)経由で最後に辿り着いたのは、漫画家である松永豊和の自伝的小説「邪宗まんが道」でした。

何気なく読み始めたら止められず、3時間かかって読破。

作者の名前こそ実名で書かれていますが、その他の登場人物・雑誌名などは仮名になっています(ガッシュ事件とダブる登場人物も居るとか)。

物語はJR天満駅前の喫茶店で漫画『トンボリ金融王・亀吉』の作者・雨木傘二のアシスタントの面接を受けるところから始まります。

■ 自伝的小説『邪宗まんが道』(あの松永豊和は今)

ある編集者には、「この作品を発表してしまうと、松永さん、あなたはもう漫画を出せなくなるかもしれませんよ」とも言われた。業界から干される、という意味だ。でも僕は、「全然かまわない」と言った。なぜならば、この自伝的小説作品を書いていた三年のあいだ、どこの漫画出版社からも依頼が来なかったからだ。とうに僕は、見捨てられているのだ。(あとがきより)

この小説を発表すべく文芸出版社を回ったそうですが、良い返事を受けられなかったという経緯があり、自分のサイトで発表するような形になったようです。

生々しいギョーカイ暴露話として覗き見的な面白さも当然あります。でも、それ以上に読み物としてとても面白いです。

描かれるのは、何かを作りたいという気持ちを持ってしまったがゆえの葛藤、編集者への不信、出版社との対立、認められない苛立ち、暴走。編集者や出版社への愚痴や苦労自慢が延々続くのかといえば、実際そうなのですが、作者自身の醜さも曝け出している上に、関西弁の語り口の面白さもあってかイヤな感じは無く、清々しささえもあります。でも、読後気付けば何故か泣いている自分、という作品です。

Review : 2008年06月10日 16:43

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