2008年07月23日 21:07

食品の迷信 - 芳川充

食品の迷信 - 芳川充土用の丑の日にウナギ業界本。

[書籍]
タイトル : 食品の迷信 「危険」「安全」情報に隠された真実とは
著者 : 芳川充
出版社 : ポプラ社
出版年 : 2008年

水産物の輸出入に携わっていたという著者(今はSEO業者)による反フードファディズム本。フードファディズムとは、「非科学的な食品情報への過信」というような意味合いの言葉です(Wikipedia)。

ウナギの偽装はあの手この手で大規模に行われている、国産ウナギの8割は中国台湾産、店頭に掲げられる産地証明書は無意味、責められるべきは全て知って加担してるのに消費者の味方の振りをしているスーパー。なるほど内部の人物の告発だけに真実味があります。

返す刀で消費者の国産信仰・天然信仰・無農薬信仰などを次々斬っていきます。食品添加物は安全、中国の日本向け食品輸出は基準が厳しいので安全、養殖のほうが天然より安全でおいしい、無農薬食品にはリスクがある。残念ながら、本書はこのあたりの論拠が甘い。

うなぎ政府がバケツ一杯食べても害がないていってるんだから気にせず添加物食べましょう、中国産ウナギは私が毎日食べてたのに今も元気ピンピンだから安全、戦後生まれの老人が農薬も添加物も今以上に食いまくってたのに日本は長寿国でしょ、発がん性ある添加物がダメってコーヒーのほうが発がん性あるから日本も添加物の基準を緩めるべき、添加物や残留農薬よりも食中毒を心配したらどうですか、などなど。

スーパー主導で消費期限が短く設定される問題や、添加物への過剰な拒否反応ムードについての批判など、頷ける章も多くありますが、現在進行形で一進一退で研究や議論が続いている食品添加物の人体への影響に対して、政府の今の基準を盲信して、上のような論理を引いて早々と安全宣言してしまうことが多いのには強い違和感があります。

片手では「国は守ってくれない」と薬害エイズを挙げて行政の怠慢を指摘し、ザル法の抜け穴をつく悪徳業者や行政検査の形骸化を批判しながら、もう片手では国の厳しい基準を満たしてるんだから食品添加物を受け入れなさい、検査を通った中国食品どんどん食べなさい、ということでは、迷信への洗脳を解くための論理としては強度が足りないように思います。

フードファディズムの急先鋒「買ってはいけない」系の食品本に対して、中国食品を売る側の視点からの反論として、おおいに考えさせられる一冊である事は確かです。スーパーの国産ウナギ弁当でも喰いながらどうぞ。

Review : 2008年07月23日 21:07

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