2008年10月08日 12:21

「Wipeout」と「I Survived a Japanese Game Show」

たけし城をパクりたくなるくらいに、日本の「ゲームショー」がアメリカで受けているらしいというお話。

■ TBS:米ABC「たけし城のパクリだ」と提訴(毎日.jp)

TBSは7日、米ABCテレビが夏に放送した番組「Wipeout」が、TBSが著作権を持つ番組「風雲!たけし城」「SASUKE」「KUNOICHI」と酷似しているとして、番組の差し止めと損害賠償を求め、米カリフォルニア連邦地裁に提訴した。TBSによると、「風雲!たけし城」や同番組のコンセプトを同局から購入して作られた番組は、アメリカなど約50カ国で、「SASUKE」など2番組は同国で放送されている。「Wipeout」は、6~9月に放送され、ABCの今年最大のヒットとなった。一般視聴者が屋外でアトラクションに挑戦するなどの番組の基本構造やナレーション、撮影方法などが、TBSの番組に似ているという。TBSは「当社のみならず、テレビ番組という貴重な財産を守る観点から、裁判所の判断を仰ぐのが最善と判断した」としている。

米ABCが全く許可無しに「風雲!たけし城」「SASUKE」をパクって番組「Wipeout」を作った、ということっぽいです。

日本もテレビ放送開始以来アメリカの番組を現在進行形でさんざんパクってきたくせに、という正論がありつつも、Wikipediaを見る限り「Wipeout」を作ったプロダクションはこの番組のフォーマットを世界中に売りまくっているようで、そうなってくると心情的な面を越えてしまって、TBSも権利を売って商売している手前、法的に訴えなければかえって各方面に角が立ってしまうという状況なのでしょう。

▲ Wipeout! episode 1, part 1

これは訴えられてもしょうがないレベルです。「たけし城」をスマートにして「SASUKE」を足して2で割った感じ。下に落ちても失格にならないのが緊張感がなくて、自分の感覚では正直いってあまり面白くないですね。

アメリカのメディアはこの番組をどう受け止めているのか、検索してみるといくつかの記事がありました。

■ Wipeout and I Survived a Japanese Game Show Tonight(Huliq News)

“Wipeout” is an Americanized equivalent to Most Xtreme Elimination Challenge (MXC, for short) that has aired on Spike TV in recent years,

「Wipeout」は「たけし城」をアメリカナイズしたものだ、ってことはアメリカ人にとってもある程度は共通認識のようです(たけし城はMost Xtreme Elimination Challengeというタイトルでアメリカでも放送されていた)。

■ Will Americans fall for Japanese-style game shows?(The Boston Globe)

Matt Kunitz, the executive producer of "Wipeout," said his own show is "90 percent 'Fear Factor'-inspired, 10 percent Japanese game show," and was designed as a less-gross sequel to his long-running NBC hit.

「Wipeout」の制作者も日本のゲームショーの影響を10%くらい受けていることを認めているというインタビュー。ちなみに残りの90%とされる「Fear Factor」は往年の「ザ・ガマン」のような、グロい番組のよう(→ 紹介するブログ)。この「Fear Factor」を作ったプロダクションが「Wipeout」を手がけています。

■ American TV not crazy, just Japanese(American Renaissance)

By now, you're probably picking up that the most consistent themes in Japanese game shows are humiliation and embarrassment—sometimes to the point of sadistic—which oddly enough can serve as stress relief for conservative Japanese.

ゲームショーを通してアメリカと日本の文化比較をしている記事です。日本のゲームショーは「屈辱と困惑」が一貫したテーマになっている、日本人は恥をかきたく無いから頑張る、アメリカのショーは敗者を尊重する、など。調べれば調べるほど、日本のゲームショーの「ヘンさ」を良くも悪くも思い知らされます。

さて、上の記事全てに「Wipeout」と並んで記述されている番組があって、タイトルは「I Survived a Japanese Game Show」。「Wipeout」同様にABCの番組で、8時から「Wipeout」が、9時から「I Survived a Japanese Game Show」が放送されているんだとか。この番組の第一回がYouTubeで全部見れるようになっています。

▲ I Survived A Japanese Game Show: Episode 1 - Part 1/5

これはメチャクチャ面白い!

アメリカ人10人が来日、架空の日本のゲーム番組「本気で(Majide)」 に出演して毎週一人ずつがゲームによって脱落、「日本風」ホテルで共同生活を行い、時には街に出て日本文化に触れる、最後まで残った勝者は25万ドル、という昔日本でもやってた「サバイバー」とかみたいなリアリティショーです。

「数々の伝説的番組が作られたスタジオ」として仰々しく紹介されるゲームの舞台「東宝スタジオ」。実際に東宝が架空の番組「本気で」制作に協力していて、セットやゲーム内容はもちろん、司会者や客のノリ、テロップやCGの使い方など普通に日本で流れてそうな作りで、「めちゃイケ」「はねる」等のフジ系のバラエディーのゲームコーナーと「フレンドパーク」をミックスしたような作り。そこにアメリカ側の間違った解釈や過剰な解釈が入っていて、とてつもなくシュールです。映画「Lost In Translation」を地でいくようなカオスな番組。異文化衝突の火花が激しすぎます。

番組ホストへのアメリカ在住日本人向けのサイトによるインタビュー記事が有ります。

■ 「I Survived a Japanese Game Show」ホスト役、トニー・サノさん聞く(hokubei.com)

制作チームは、たくさんの日本の番組を見て、アイデアを練り、それを日本で実際に番組を制作している東宝スタジオに伝え、共同作業でつくりました。正確には分かりませんが、特定の番組のフォーマットを採用すると、ライセンスが必要になるので、まねはしなかったと思います。

「本気で」司会の男性「神田瀧夢(Rome Kanda)」はアメリカで活動する実在のコメディアンのよう。「まじで〜」という番組タイトルをコールするところとか、地方局の人気番組の司会者っぽいインチキな雰囲気がいい。

宿舎の「mama-san」として登場するかっぽう着姿の女性、見覚え有るなーと思ったら、エンドクレジットに「Kozue Saito」。

■ ご無沙汰で~す(斉藤こずえのブログ★)

2日前までアメリカABC放送の仕事をさせていただきやしたぁ。楽しかっです。久しぶりのドップリ英語圏で初日は少し不安だったのですが問題ありませんでした(^-^)v

「Wipeout」は日本のものから贅肉を取り除いてスマートにし、「I Survived a Japanese Game Show」は日本のものをアメリカの典型的リアリティショーの枠組みに組み込むことで複雑に過剰にした感じです。いずれも家族向け番組として申し分なく、ローカライズの技術はさすがのものです。でも、やはりコースから落ちたところを泥水にしたり小麦粉にすることを発明した人が一番偉大、と日本人のはしくれとしては思いたいところです。

「I Survived a Japanese Game Show」の方は早くDVDとかで全部見れるようにならないか、待ち遠しいです。

News : 2008年10月08日 12:21

ブックマーク

Yahoo!ブックマークGoogleBuzzurlニフティクリップlivedorr clipdel.icio.usはてなブックマーク「Wipeout」と「I Survived a Japanese Game Show」のはてなブックマーク数

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL :
http://www.spotlight-jp.com/matsutake/mt/mt-tb.cgi/229