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2008年11月02日 20:36
There's Me and There's You - The Matthew Herbert Big Band
マシュー・ハーバート先生のビッグバンドプロジェクト第二弾。
前作「Goodbye Swingtime」から5年。待望のThe Matthew Herbert Big Band名義の2枚目のアルバムです。
前作では、ハーバートの作品であることに気付かないくらい「まっとう」なビッグバンドサウンドの曲があったり、サンプルネタや添え物程度にしかビッグバンドが聴こえない曲が有ったり、サンプリングで政治性を強く打ち出した曲もあればそうでない曲もあったり、どのようにビッグバンドをハーバートの世界に溶け込ませるか、様々な可能性を試行錯誤している段階のようで、その結果の多様性がアルバムの魅力の一部にもなっていました。
一方で、この「There's Me and There's You」は、全ての曲に一貫した方向性がうかがえる一体感が有ります。「100枚のクレジットカード」「US大統領選の歴代ピンバッヂ」「ディズニーのジグゾーパズル100ピース」「イスラエル兵士が非武装のパレスチナ人を撃ち殺す音」といった政治性・メッセージ性の強いサンプリングは全曲に入り、ビッグバンドにそれらサンプルを躊躇なく被せまくる。ビッグバンドのアンサンブルは更に歴戦錬磨のベテランビッグバンドを思わせる複雑で本格的なものとなり、圧倒的なライブ感で迫ってきます。
今作はリードボーカルはEskaという黒人女性一人のみ。そしてこの人の声がなかなかいいです。The Matthew Herbert Big Bandの専属リードボーカルという扱いでしょうか。バンドの出す「往年」っぽさは、この人の声の古いジャズっぽさの寄与するところが大きいです。現在ハーバートのプロデュースでソロアルバム製作中です。
ビッグバンド含有率をアップさせながら、同時にハーバート含有率もアップ。そこを「盛り沢山」「絶妙の組み合わせ」と取るか「うるさい」「くどい」と取るか、自分は前者として大いに楽しみました。
廃盤になっていた前作「Goodbye Swingtime」も、このタイミングで再発されたみたいです。Jamie Lidell、Plaid、Mouse On Mars、Arto Lindsayなども参加しているので、これを機会に未聴の方は是非どうぞ。そろそろ次あたりは本名名義かDr.Rockitかでの実験的なサンプリング重視アルバムが出てもいいころ?
Review : 2008年11月02日 20:36
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