2009年04月20日 14:31

LotusFlow3r - Prince

 LotusFlow3r - Prince あと「MPLSound」と「Elixer」についても。

[音楽/レビュー]
タイトル : LotusFlow3r / MPLSound / Elixer
アーティスト : Prince
レーベル : NPG records
リリース年 : 2009/3
試聴 :

またKonozama(→Link)にやられて、店頭発売からだいぶん遅れてCD入手。

プリンスの2枚のアルバム「LotusFlow3r」「MPLSound」と、プリンスがプロデュースした新人女性シンガーBria Valenteのデビューアルバム「Elixer」の3枚を抱き合わせた不思議な形態でのリリースです。「LotusFlow3r(Lotus Flower=ハスの花)」の「3」は単なるドメインネーム対策という線も強いですが、恐らく3枚組の3とひっかけてるのでしょう。今気づきました。

今作「LotusFlow3r/MPLSound/Elixer」はアメリカのスーパーマーケットTargetで限定販売という流通方式。04年「Musicology」はコンサート会場で無料配布。07年「Planet Earth」はイギリスで新聞の付録として配布。とことん音楽のリリース方法で実験してやろうというこの並外れたチャレンジ精神は、やっぱり90年代にワーナーと揉めて自由に創作活動できなかった冷遇時代が根底にあるのでしょう。ちなみにTargetというのはミネアポリス発祥の企業だそうで、たいした地元愛です。

さて、肝心の中身について。3枚組となると96年「Emancipation」を思い出しますが、今回は3枚が一緒にパッケージされているだけで、「LotusFlow3r」はギター、「Mplsound」は打ち込み、Bria Valente「Elixer」はジャジーな女性R&Bと、それぞれのアルバムはコンセプトが明確に異なる独立した作品となっています。例えば「LotusFlow3r」に打ち込みドラムは無く、「MPLSound」に生ドラムはありません。ボーカルのミックスも各々違うように聴こえますし、「MPLSound」にはアルバムを通してロックギターがほとんど聴こえません。「Musicology」「3121」「Planet Earth」と3作続いた「きちんとポップスアルバムを作って大衆にアピールしたい」路線の最近の作品が、ロックありファンクありR&Bあり80年代あり、トータル感が薄いゴチャ混ぜ状態だったのとは対称的です。

LotusFlow3r - Prince先行リーク音源を数曲聴いたときは「ダメかも」とネガティブな印象を受けてしまった「LotusFlow3r」でしたが、CDでトータルで聴いたらこれがなかなか良くって、2001年「The Rainbow Children」からジャズを気持ち引っ込めてブルースロックを少々、大作の気負いを大幅ダウン、というような感じ。かなり気に入りました。多くの曲がシンプルなバンドサウンドです。サンタナ・ジミヘン直系のプリンスらしいギターがガンガン鳴っている一方で、プリンスらしいファンクもしっかりあります。多くの曲に統一した残響処理が施されているようで、ボーカルには若干強めのリバーブ。このミックスが一発録りっぽいラフなライブ感を演出していて、アルバムのトータル性アップに寄与しています。

もう一枚のプリンスのアルバム「MPLSound」は軽いポップ・ファンクが中心(「MPLS」はミネアポリスの略)。こちらで焦点を当てるべきは、LinnDrumサウンドの大々的な復権でしょう。LinnDrumというのは、80年代のプリンスが使いまくっていたドラムマシンです。

▲ linndrum live set demo

Mplsound最近のR&B界隈でLinnDrum系の音がリバイバルしているのを見据えてのことと推測しますが、プリンス自身、常に1.2曲は近年のアルバムでLinnDrum系の曲を小出しにしていたので(What Do U Want Me 2 Do?、Black Sweat、Future Baby Mama)、「今聴くと新鮮」とか「遂にやってくれた」感はあまりありません。逆に、コンセプトとはいえ、ちょっと懐古的になっているがひっかかります。でも「Chocolate Box」「No More Candy 4 U」のようなアップテンポで茶目っけのある曲でLinnDrumが聴けるのは素直に嬉しいです。

▲ Prince Feat Q Tip Chocolate Box

Bria Valente - Elixerさて最後の一枚、よく考えたら久々に他アーティストを手がけた作品となるBria Valenteの「Elixer」は、全体の印象としてずいぶんアクの薄い内容で、スムースジャズ系の女性ボーカルアルバムとカテゴライズしてほぼ問題ないでしょう。ボーカルの線が細くて個性が弱いのがアクの薄さの原因で、その淡白さを許容できるかどうか。曲単体としてはいいものも結構あって、サウンド&メロディの節々からしっかりプリンスの香りが感じられます。特にプリンスとのデュエットが聴けるタイトル曲「Elixer」はネットリしたエロいバラードで、こういうのもかなり久しぶり。

結論としては、「LotusFlow3r」が特に気に入りました。曲間が繋がってるというのもありますが、パソコンに取り込んでランダムで聴く今風な聴き方ではなくて、きちんとCDで最初から最後まで聴きたくなるアルバムです。

3枚組、しかもうち1枚が別人のアルバム、おまけにインディリリースの流通はスーパー、という極めて特殊なリリース形態なので、今後入手困難になる可能性も大きいのではないでしょうか。通常のCD流通に乗るような形での再発があるのか不明ですし、興味ある人は早めに買っておいたほうがよいと思います。

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Review : 2009年04月20日 14:31

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