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2009年05月08日 21:06
スラムドッグ$ミリオネア
クイズ$ミリオネアの映画。
まさに「クイズ$ミリオネア」の映画でした。番組の正式名は「Who Wants to Be a Millionaire?」。元々はアメリカではなくイギリスの番組で、世界中でテレビ局がフォーマットを買い取って自国版を制作・放送していて、インドでも実際に放送されています。そして、この映画『スラムドッグ$ミリオネア』の制作には、番組のフォーマットを作成したイギリスの制作会社がしっかり関わっています。おばさんシンガーで話題になった「Britains Got Talent」といい「American Idol」の元になった「Pop Idol」といい、イギリスのテレビの企画力は凄いですね。
Wikipediaによるとインドでは「2000年の放送開始以来、インド亜大陸沿いの多くの国々で、文化的象徴とも言える存在になっている」だそうで、「インドのテレビ番組の中で最も成功した番組」といわれるくらいの人気番組なんだそうです。「文化的象徴」といわれるくらいの番組、日本でいえば昔の「紅白歌合戦」を思い浮かべます。一方で、アメリカでは開始当初は大ブームになったものの、半年で視聴率が3分の1になったとかで、日本の状況はこれに近いかもしれません。
日本版を見ていた記憶を紐解いてみるに、ミリオネアがつまらなくなったのは、問題の難易度をコントロールして賞金を予算内に収まるよう調節しているのがバレバレだったこと、賞金が1000万円と他国に比べて少なすぎたこと、みのもんたの存在、そしてとどめを刺したのは、挑戦者が芸能人になったこと。これらが要因となって、番組への興味を失いました。その点、インドのミリオネアは賞金2000万ルピー、日本円にして4000万円。月収平均3万円程度の国ですから、5億円くらいの感覚でしょうか。この金額の持つ破壊力はすさまじいです。そのうえ、生放送です。一般人が生涯賃金を軽く超える金額にチャレンジする姿を生放送で見るのは、最高にスリリングでしょう。
スラム出身の主人公ジャマールが生き別れた幼なじみの女性を捜すために番組に出場する、という設定に「みんながミリオネア見てるとか、ちょっと都合良すぎるやろ」みたいな醒めたツッコミを入れながら見てしまいましたが、このインドのミリオネア事情を知るとすんなり受け入れられました。これは人気クイズ番組をテーマにした映画、程度のものではなく、正真正銘の「クイズ$ミリオネア」の映画であって、さらにいえば、「そう来たか!」的なとても良く出来たストーリーへの仕掛けの数々はインドの「Who Wants to Be a Millionaire?」じゃないと成立しないものばかりです。
また、そういったアイデアが先行した設定の面白さだけでなく、ダニー・ボイル監督のスピード感ある構成・編集・演出が映画に映画ならではの面白みをしっかりと加え、脚本はミリオネアと主人公の人生がクロスする複雑な構成を、ラブストーリーを背骨としてわかりやすくスマートに見せていきます(原作「ぼくと1ルピーの神様」とはかなり内容が変えられています)。そこにA.R.ラフマーンの最新型インドミュージックが彩りをプラス。
「現代印度おとぎ話」として未来永劫語り続けられるであろう素晴らしい作品です。
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Review : 2009年05月08日 21:06
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