2009年05月21日 12:07

Tom Tom Club (Deluxe Edition)

Tom Tom Club (Deluxe Edition)80年代ファンク傑作が1stと2ndセットでCD化。2ndは初CD化。

[音楽/レビュー]
タイトル : Tom Tom Club (Deluxe Edition)
アーティスト : Tom Tom Club
レーベル : Island
リリース年 : 1981/1983/2009
試聴 :

Talking Headsのリズム隊であるTina WeymouthとChris Frantz(夫婦)が結成したユニットのファーストアルバム『Tom Tom Club』(81年)とセカンドアルバム『Close to the Bone』(83年)の2CDセット。セカンドアルバムの方は今回が初CD化です。ダブ・レゲエ・ファンク・ニューウェーブが渾然一体となった愉快痛快なサウンドです。

▲ Tom Tom Club - Wordy Rappinghood

Talking Heads本体が『Remain in Light』をリリースすると、David Byrneがソロ活動を開始してしまいl、その他メンバーが暇になってしまいます。そこでTina&Chris夫妻は「Lee "Scratch" Perryとコラボレーションしよう」と思い立ち、なんとか約束を取り付けて南国バハマのCompass Point Studiosへ向かいます。しかし、約束の日になっても一向にLee Perryはスタジオに現れず。しかたなくTalking Headsのレコーディングにチョロっと参加したことのあった(「Once in a Life Time」で)23歳の新人エンジニアSteve Stanleyを連れてきてレコーディングを開始した、という舞台裏がライナーノーツに書かれています。

ライナーノーツは20ページを超えるボリューム。この『Tom Tom Club』『Close to the Bone』以外のアルバムなども含めてのTom Tom Clubのバイオグラフィ的内容です。"Wordy Rappinghood"や"Genius Of Love"で聴けるハイテンションのコーラス陣はTina Weymouthの2人のリアル妹Lani&Lauraだそうで、"Genius Of Love"のドラムパートはレコーディング初日にChris Frantzがベロベロに酔っぱらって録音したものだそうです。

10曲のボーナストラックについて、トラックリストの情報だけではわかりにくい5曲の補足。

  • Under the Boardwalk … The Driftersのカバー
  • Spooks … As Above So Belowのインストバージョン
  • Elephant … L'ElephantのDubバージョン
  • (You Don't Stop) Wordy Rappinghood … Wordy Rappinghoodのインストバージョン
  • Yella! (Mr Yella) … Genius Of Loveの別人ボーカルのラップバージョン

クレジットにインストと書かれている曲も、インストとはいってもカラオケではなく、ダブっぽい要素のあるインストです。"Yella!(Mr Yella)"のラップの主は恐らくはChris Frantz。Robert Palmerも少しラップしています。

▲ Yella 12'' (Mr. Yellow / Gotta Be Strong to Live in New York) - Tom Tom Club

ニューヨークでの生活のつらさをラップしています。「黒人の間ではやってるラップってのをやってみっか」的な白人ヒップホップとは一線を画す、おふざけ感も含めた上でかなり本質を突いた感触。そうしたこともあってなのか、元祖ギャングスタヒップホップグループであるN.W.AのDJ Yellaはこの曲のタイトルから名前をとったとか。"Genius Of Love"がヒップホップのトラックに山ほどサンプリングされ続けるのは、ただ単にビートがいいからではなく、歌詞を含めたこの曲の持つ哲学がラッパーを強くひきつけるものを持っているのでしょう。

クレジットにはRemixバージョンと記されている"On On On On"ですが、Remixバージョンのほうがテンポが少し早くて、アレンジも少し違います。これはRemixというより別レコーディングバージョンじゃないかと思います。アレンジが若干Talking Headsっぽく聴こえて面白いです。「Talking Headsとは180度違う作品を作りたい」という意識があったようなので録音し直したのではないかと推測します。ライナーノーツによると、レゲエの他には、Kraftwerk、Zapp、B52sをイメージして作品作りしていたようです。

エンジニアのSteve Stanleyのアルバムへの貢献はかなり大きく、すべての曲にあるダブ的な要素はもちろん、"Genius Of Love"では彼の名前が作曲にもクレジットされているほどです。自分はレゲエに疎いので知らなかったのですが、この仕事を切っ掛けに結構な大御所に成長されたそうです。自分の大好きなB'52sのアルバム『Whammy!』もこの人の仕事でした。のちにTina&Chris夫妻はSteve Stanleyと一緒にHappy Mondaysのアルバム『Yes Please!』をプロデュースしています。映画「24 Hour Party People」で赤裸々に描かれている映画ラスト付近のゴタゴタは、まさにこのアルバムの製作現場の話です。

Tom Tom Clubは現在も活動中で、今年の夏はなんとSummer Sonicで日本にやってきます。

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Review : 2009年05月21日 12:07

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