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2009年08月23日 08:54
Omnipresence - O.M.F.O.
ShantelのレーベルEssayから3rdアルバム。
O.M.F.O.はウクライナ出身のオランダ移民German Popovのプロジェクト。O.M.F.O.の名前は「Our Man from Odessa」の頭文字で、Odessa(オデッサ)は彼の出身地ウクライナの港湾都市。日本ではガンダムの「オデッサ作戦」でおなじみの地名です。東ヨーロッパやバルカン半島の民族音楽を中心に、世界の辺境の民族音楽と現代のクラブミュージックとをリンクさせた作品をリリースして注目を集めるEssay Recordingから3rdアルバムがリリースされました。
ロシアや東欧の音楽をシンプル&ストレートにエレクトロ化していたファースト「Trans Balkan Express」と、Atom Heartとの共同プロデュースでAtom印のキレキレのデジタルエディットが冴え渡るセカンド「We Are the Shepherds」の2枚に共通して濃厚に充満していた、本気なのかジョークなのかわからないギリギリのユーモア(コメディ映画「ボラット」のサントラに、映画のイメージにぴったりの2曲を提供しています)は、今作では控えめです。ですが、そのぶん音楽的なアイデアの奥深さや細部のきめ細かさが増しているように感じます。「笑ってくれるのも歓迎だけどそろそろ正当に評価してくださいよ」といったところか。とりわけダブっぽいエフェクト使いが特徴的で、テンポもゆったりしたものがほとんど。良質なエレクトロニック・ダブが聴きたいという人にお薦めできるアルバムです。
タイトルの「Omnipresence」は、あちこちに存在している、というような意味。今作は東欧やロシアにとどまらず、中央アジア・東ユーラシアのあちこちに存在している様々な民族音楽が取り入れられています。アルバムラストを飾るタイトルトラック「Omnipresence」に至っては日本の尺八や鼓の音などが登場します。それぞれの民族音楽に今風な音処理を施してアップデートさせている、ということではなく、デジタルとアナログ、人と機械、東欧・ロシア・アジア、すべてを渾然一体に溶け合わせた中にOMFO独自の民族音楽をしっかり作りあげています。今作は特に渾然一体化が顕著です。聴いてる時に頭に思い浮かぶのは、砂漠の地平線とスパイスのきいたチャイ。
ファーストアルバム「Trans Balkan Express」のタイトル曲。説明するまでもなくKraftwerk「Trans Europe Express」へのバルカン半島からの回答です。
セカンドアルバム「We Are the Shepherds」からの曲のライブ映像。見たこと無い楽器がいろいろ。ライブがすごく楽しそう。
リリース元のレーベルEssayからは、筆頭Shantelの待望の新アルバム「Planet Paprika」がリリース間近です(→Amazon)。こちらも楽しみです。
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Review : 2009年08月23日 08:54
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