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2009年10月08日 12:32
フレッシュ!世界一コスられてる大定番スクラッチネタの元ネタが判明して感動
元ネタ判明感動シリーズ第三弾。
この音です。
ボコーダーで「This Stuff Is Really Fresh」と言っています。直訳すると「この素材は非常に新鮮です」。なんの統計を取ったわけでもなく、完全に感覚的な主張ですが、世界で一番スクラッチされているのはこの音ではないでしょうか。それこそヒップホップだけでなくポップス、ロックから日本の歌謡曲まで、スクラッチの入った曲を何曲か聴けば、かなりの高確率でこの音がコスられています。
では、そもそもこの音はなんの音なのか。最近はサンプリングネタはブックレットなどにクレジットされるようになってきましたが、さすがに1秒にも満たない定番のスクラッチネタがクレジットされることはなく、モヤモヤしたまま長年の疑問となっていました。思い立って、気合いをいれてネット上を捜索したら、答えがわかりました。BeeSide(もしくはBeside、Fab 5 Betty、Fab Five Freddy:後述)というアーティストの曲「Change The Beat (French Rap Version)」のラストの部分でした。
セルロイド(Celluloid Records)というニューヨークのレーベルから1982年にリリースされたレコードです。セルロイドはMaterialのビル・ラズウェル
(Bill Laswell)が深く関わったレーベルで、この「Change The Beat」もMaterialがプロデュースです。12インチシングルのB面のバージョンにだけこの音が入っています。恐らくこのボコーダーの声は、「Voice」としてクレジットされているRoger Trillingという人物のものでしょう。Roger Trillingについて調べましたが、今ひとつよくわかりません(→discogs)
この曲はFab Five Freddyの曲「Change The Beat」の別バージョンです。Fab Five Freddyはヒップホップのパイオニアの一人で、映画「Wild Style」にも出演しています。このスクラッチネタが収録された「Change The Beat」は彼のデビューシングルではあるのですが、B面に関しては彼の声は入ってないですし、音楽的貢献はなさそうです(→A面 YouTube)。
フランス語のラップはBeeSideという女性アーティストが担当しています。A面「Fab Five Freddy」B面「Beside(BeeSideの誤植?)」と分けてクレジットされている盤もありますが、手元にある2006年リリースのコンピレーションCD「Celluloid Years」(→Amazon)は女性ラップのバージョンも「Fab Five Freddy」がクレジットされています。「Fab 5 Betty」とクレジットされているプロモ盤も存在します。どれが正しいのか、詳細は不明です。
さて、この大定番の音ネタを、バトルDJの最高峰、Q-bertがコスるとこうなります。
「Ahhhh This Stuff Is Really Fresh」の「Ahhhh」の部分と「Fresh」の部分を使っています。今となっては、様々なレコードからスクラッチに最適な部分だけを繋ぎ合わせて作られたスクラッチ用のレコードという便利なものが存在するので、こういう大定番ネタを元ネタのレコードから直接コスることはほとんど無いと思います。Q-bertがコスっているのもそういうレコードです。
以下に「Fresh」に負けず劣らず頻繁にスクラッチされる大大大定番ネタの出所をあげておきます。
■「Ah Yeah」Run D.M.C - Here We Go
冒頭でいきなり「アーイエー」。ヒップホップで声ネタといえばやっぱりこれです。他にも「Check this out」「it goes a little somethin like this」などサンプルされているポイントかなり多くあります。ビートはBilly Squier「Big Beat」。
■「Bass」Bring The Noise - Public Enemy
0:06。この曲のギターノイズっぽいサンプリングはFunkadelic「Get Off Your Ass and Jam」から。ホーンはMarva Whitney「It's My Thing」から。冒頭の語り「Too black, too strong」はMalcolm Xの声。
■「What?」Joe Ski Love - Pee Wee’s Dance
0:48。2:41で赤い服を着て踊っているのが無名時代のIce Tです。
■「Cut」Dimples D - Sucker DJ
1:24「He cuts the music with so much class」から。トラックはMarley Marlの作。DOOPEES「DOOPEE TIME」と同じサンプリングネタは、テレビドラマ「かわいい魔女ジニー(I Dream Of Jeannie)」の主題歌です。
■「Scratch」Malcolm McLaren - D'ya Like Scratchin'
「What is it」の部分もよくサンプリングされます。Malcolm McLarenは他にも代表曲「Buffalo Gals」の中に「All that scratchin' is makin' me itch」などの定番ネタがあります。
■「Good」Chic - Good Times
0:20。ストリングスの「ヒュンッ」っていう音もよくスクラッチされます。Sugarhill Gang「Rappers Delight」の例をあげるまでもなく、ヒップホップの誕生に大きな影響を与えた曲です。
こうやって元ネタを探して聴いてみると、面白いことにほとんどの場合、元ネタの曲自体が凄く格好いいのです。ブレイクビーツの元ネタをコレクションする人は多くいますが、一瞬のスクラッチネタの出所を気にする人は、作り手以外にはあまり聞いたことがありません。たまにはそのスクラッチ1音にどういう背景があるのか、スクラッチしているアーティストがその音にどういう意味を込めているのか、元曲を聴いて思いを巡らせてみるのも楽しいと思います。
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Text : 2009年10月08日 12:32
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