2009年10月12日 08:41

Tracks And Traces - Harmonia & Eno '76

Tracks And Traces - Harmonia & Eno '76イーノが、ドイツで、ジャーマン・プログレの巨人達と、出会った。

[音楽/レビュー]
タイトル : Tracks And Traces (Reissue)
アーティスト : Harmonia & Eno '76
レーベル : Gronland
リリース年 : 1997/2009
試聴 : ■Amazon.com

まず、登場人物を数式的にまとめます。

Dieter Moebius + Hans-Joachim Roedelius = Cluster,
Cluster + Michael Rother (Neu!) = Harmonia,
Harmonia + Brian Eno = Harmonia & Eno '76

1976年、ClusterやHarmoniaが鳴らしていた「アンビエント・ロック」とも呼ぶべきドイツ流のサイケデリック・ロックに心底惚れ込んだブライアン・イーノが、半ば押しかけるような形でHarmoniaの作業するドイツのスタジオを訪れて、「アンビエントやろうぜ」とばかりに繰り広げられた英独静音スーパーセッションの記録が、このアルバム「Tracks And Traces」です。この音源が初リリースされたのは、セッションから20年以上が経過した1997年のこと。今回、その時のCD化から漏れた曲が3曲追加され、音質も大幅アップされたものが再リリースされました。

Harmoniaから無邪気さを引いて抑制を与えたような作風で、チルアウト・アンビエントといえば確かにそうですが、その後の彼らのドロドロアンビエント作品達と比較すると、まだ思いっきりの足りない、どっちつかずな内容です。ポコポコとやさしいリズムボックスあり、アナログシンセのノイズが刻むリズムあり、開放感にあふれたギターのさざ波あり、15分を越すドローン大会あり、まさにジャーマンプログレのいいとこ取り。それに加えて5曲目「Luneburg Heath」では、イーノの歌声まで聴くことができます。

この「いいとこ取り状態」を是とするか非とするかは個人の趣向の問題になってきますが、自分はこれくらいのヌルさで丁度良く感じました。イーノのアートロック時代とアンビエント時代のミッシングリンクを繋ぐだけでなく、英米のロック文化と、それとは価値観の異なるドイツのロック文化をも繋げる、ロックミュージックの十字路、交差点的な意味のある作品です。

Harmoniaの3人とのセッションを終えたイーノは、薬物からの更正を目的にドイツを訪れていたDavid Bowieに召還されてベルリンに飛び、David Bowieのアルバム「Low」のプロデュースを手がけることになります。その後1977年にイーノは再びClusterの2人と合流して「Cluster & Eno」と「After the Heat」の2枚の傑作アンビエントアルバムを生み出します。ここでアンビエントのコンセプトを確固たるものにしたイーノは、1978年のソロアルバム「Ambient 1: Music for Airports」のリリースを皮切りに、本格的アンビエント時代に突入していきます。

Review : 2009年10月12日 08:41

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