2010年04月28日 20:54

私もエビちゃんみたいになりたい / 第9地区

エビというよりもザリガニに見えました。

[映画/レビュー]
タイトル : 第9地区 District 9
監督 : ニール・ブロムカンプ
製作 : ピーター・ジャクソン
上映時間 : 111分
出演者 : シャルト・コプリー 他

「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソンが、若手の監督ニール・ブロムカンプと一緒に人気ゲーム「HALO」を映画化しようと奔走するものの企画がポシャってしまい、しかし、せっかくなので何かやりましょうか、と空いた時間で作り上げた異星人モノSFムービー。

異星人の巨大UFOがやってくるのがニューヨークでもロンドンでも無く、南アフリカのヨハネスブルグの上空だというのが光っています。ニューヨークやワシントンD.C.を襲撃するよくある異星人襲来映画とは異なって、この映画では人類と異星人は集団的な戦闘を行ないません。

舞台は南アフリカの第9地区。予告編や紹介記事などから、スラムに隔離されて生活する異星人を描いた擬似ドキュメンタリー風の映画で、アカデミー賞にノミネートされるほど質の高い内容、という程度の前情報は仕入れてました。南アフリカで隔離といえば当然アパルトヘイトが頭に浮かぶわけで、人種差別問題にシリアスに切り込むような社会的・政治的なSF映画を期待して劇場に足を運びました。

第9地区 レビュー 画像実際そのような雰囲気で映画はスタートして、エビのような容姿の異星人のスラムでの惨めな生活は、現在進行形の世界中の様々な問題や、歴史上の出来事を想起させるような、とてもリアルな雰囲気で映し出されます。ところが開始早々に脱線し始め、逃走劇あり、ブラックジョークあり、ハリウッドっぽい愛あり友情あり、最終的には高品質なCGで表現されたハイテク兵器の圧倒的なパワーに酔いしれるという、まったく先の予想がつかない、かつて見たことのない「足し算型」映画になっていきます。しかも、飛び散る鮮血だとか、宇宙人の兵器だとか、男の子が大好きな要素ばかりが足し算されていきます。

大抵の場合、いろんな要素をパッチワークして作ったような「足し算型」映画は、ハリウッド的な陳腐な内容に成り下がってしまうものですが、この映画はそうなっていないのが不思議です。擬似ドキュメンタリー的なリアルさが、後半少々薄まりながらも辛うじて保たれているのが、最後まで破綻せずに緊張感が持続していた秘訣なんじゃないかと思いました。主人公がハリウッド的なヒーローではないのも大きいです。

期待した内容の映画とは違ったのですが、結果的には、期待以上に面白い映画でした。続編「第10地区(District10)」は確実に作られそうです。でも「ホビットの冒険」で忙しいピーター・ジャクソンが一息ついてからでしょうから、ちょっと先になりそう。

音楽はClinton Shorterという人物。マイナーなテレビドラマの音楽を手がけていた人のようで、この映画が初の大きな仕事です。メタリックな重いパーカッション(時に打ち込み、時に生)がドンドコ鳴り響く躍動的なリズムの上に、アフリカっぽいボーカルと暗いムードのストリングスが鳴り響くようなタイプの音楽で、オリジナリティあってとても格好良いです。

Review : 2010年04月28日 20:54

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