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2010年04月02日 16:37
Soul JazzがクラウトロックのLP4枚組コンピ「Elektronische Musik ‘72-’83」をリリース
ついにSoul Jazzがジャーマンロック。
良質なコンピレーションを企画する世界随一の名門再発レーベル「Soul Jazz」がクラウトロック(Krautrock、ジャーマンプログレ)のコンピレーションをリリースします。
■ Elektronische musik: a guide to krautrock(Guardian)
It might be more than 30 years old, but krautrock, Germany's experimental music from the 1970s, still has a freshness that sixth-generation British indie bands can't match
CD2枚組、アナログなら4枚組という超ボリュームです。クラウトロックを幅広くおさえた珍しいコンピレーション盤ですが、なぜ珍しいかといえば、別に誰にアンケートを取ったわけでも裏情報があるわけでも何でもないですが、それはもう1曲1曲が長すぎるからに決まっています。まともにやるとCD1枚に5,6曲なんてことになります。そこのところ、このアルバムはどうなのか。トラックリストが出ています。
CD1:
- Can – Aspectacle (5.39)
- Between – Devotion (3.46)
- Harmonia – Dino (3.29)
- Gila – This Morning (5.45)
- Kollectiv – Rambo Zambo (11.39)
- Michael Bundt – La Chasse Aux Microbes (8.30)
- E.M.A.K. – Filmmuzik (3.15)
- Popol Vuh – Morgengruss (2.57)
- Conrad Schnitzler – Auf Dem Schwarzen Kanal (3.12)
- La Dusseldorf – Rheinita (7.37)
- Harmonia – Veterano (3.55)
- Faust – It’s A Rainy Day, Sunshine Girl (7.26)
- Neu – Hallogallo (10.03)
CD2:
- Cluster – Heisse Lippen (2.21)
- Ibliss – High Life (13.01)
- Moebius – Hasenheide (2.36)
- Amon Duul II – Fly United (3.29)
- Popol Vuh – Aguirre 1 (6.13)
- Ash Ra Tempel – Daydream (5.22)
- Tangerine Dream – No Man’s Land (9.05)
- Amon Duul II – Wie Der Wind Am Ende Einer Strasse (5.43)
- Roedelius – Geradewohl (3.31)
- Can – I Want More (3.30)
- Deuter – Soham (4.55)
意外にも短い曲がたくさん入っていて、そこで尺を稼いだぶんを使ってTangerine DreamやNeuの10分前後の曲をねじ込むという整頓上手。知らないバンドの名前もたくさんあります。
一曲目のCan「Aspectacle」はQ-Tip「Manwomanboogie」の元ネタですね。
FACT magazineのサイトに、プレスシートなのかライナーノーツなのか、Soul Jazzのテキストが長く引用されています。一部だけ拙訳。
■ Soul Jazz compile Elektronische Musik ‘72-’83(FACT magazine)
1970年代のドイツの実験的ロックと電子音楽の目的は、新しい音楽を創造して、過去から「自由」になることでした。第二次世界大戦でドイツが演じた役柄の結果としてドイツの若者達が感じていた文化的「虚無感」から脱するための種子となる音楽です。
(略)多くのアーティストや音楽家は、過去のあらゆる音楽的なものを完全に拒絶することが、ドイツ文化の新たなアイデンティティを築くためには不可欠だと考えていました。この時ドイツには、音楽は「シュラガー(ドイツで起こっていた歴史的な出来事と向き合おうとしない、つまらないポップ音楽)」しか存在しませんでした。
クラウトロックの特殊性はドイツの敗戦がもたらしたものとする論、11月に投稿した「BBC制作のジャーマンプログレのドキュメンタリーがYouTubeに丸々あがってる」(→記事)で取り上げたBBCの番組の中でも、各バンドのメンバーが似たようなことを言っています。敗戦でアイデンティティを失った上の世代への反発やアメリカの占領軍への嫌悪感が、60年末の世界的な学生運動の波と組み合わさって若者の間に広がっていき、新しいドイツ文化を作ろうという運動につながった、という考え方です。Amon Duulの人が「ドイツっぽいのもイヤだったしアメリカイギリスっぽいのもイヤだったから宇宙っぽくした」と言っているのが、まさに当時の雰囲気を物語っているようです。
そのBBCのドキュメンタリーの動画が、YouTubeにまだ消されずに残っています。Vol.6だけ音を消されてしまっていますが、未見の方は見られるうちにどうぞ(→記事)。
News : 2010年04月02日 16:37
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