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2010年05月16日 21:05
楽団ひとり / One One - Matthew Herbert
「One」トリロジー。
マシュー・ハーバート「One」三部作の第一弾は、「One One」ということで、ハーバート一人が全ての楽器を演奏して、一人の男の一日を表現するというコンセプトの作品です。
CDのブックレットには「One」三部作のコンセプトや、このアルバム「One One」のサンプリングネタ、演奏した楽器のリストなどが、さぞかし長々と書かれているのだろうなと想像してパッケージを開けると、そこに印刷されたのは、ハーバートのものとおぼしき指紋がひとつだけ。意外にもこのアルバムの音にコンセプト色はほとんどなく、一人の音楽家、一人の人間としてのハーバートがさらけ出されたパーソナルな作品になっています。それ自体がコンセプトといえばそうなんでしょうが。
このアルバムで聴けるのは、サンプリングの奇才が作る洗練されたハウスではなく、ビッグバンドを率いるリーダーの一人ジャズでもなく、シンガーソングライターとしてのマシュー・ハーバートの内省的な面を発露した、静かなポップミュージックです。
ハーバートの歌声は、上に貼った先行シングル「Leipzig」のPVでわかるとおり、いかにも宅録シンガーソングライターらしいフラフラしたもので(アンチAuto-Tune)、この声がアルバムの内省ムードを一層強いものにしています。全曲で歌っています。コーヒー豆に髪の毛から浜崎あゆみのCDまで、いろんなモノを演奏してきたハーバートですが、自分自身で歌うのは今作が初の試みとのことです。実際は立派なスタジオで録音しているのでしょうが、バーチャルなアパートの壁の薄さを感じさせる、堂々たる宅録ボイスです。
一人でどうしたこうしたというコンセプトは、鳴っている音とは特に関係なく、何か変わった楽器を演奏しているでもなく、サンプリングによるメッセージもなし(少なくとも音だけ聴くぶんには何もわからない)。今作は3.4分のポップミュージックをストレートに聴かせることにこだわって、シンプルに作られているように聴こえます。表面的にはシンプルながら、奥深くに陰鬱さと鈍い輝きが交錯する、複雑なムードのポップミュージック。聴いていて少し思い出したのはRobert Wyattです。
ハーバートに「Bodily Functions」「Around The House」あたりの音を求める人にとっては魅力のないアルバムだと思いますが、自分のように内気なDr. Rockit名義の音を一番愛していて、同時に古今東西の陰気ポップスを愛しているものにとっては、ドンピシャリなアルバムです。
「One」三部作の第二弾は「One Club」、第三弾は「One Pig」。
Review : 2010年05月16日 21:05
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