matsu & take

古代文明発祥の地、エジプト。今エジプトでは、連日ムバラク大統領の退陣を求める反政府デモが続いていて、予断を許さない状況です。

そんな中、偶然か必然か、80年代エレクトロヒップホップのオリジネイターの一人、Egyptian Loverのことをフっと思い出しました。代表曲は「Egypt, Egypt」。聴き始めたら気分が盛り上がってきたので、Egyptian Loverと同時期の1984年前後にアメリカ西海岸（ロサンゼルス周辺）で活動していたエレクトロヒップホップアーティストの曲を、YouTubeから10曲ピックアップしました。

■ Egyptian Lover - Egypt, Egypt

古今東西エレクトロを代表する曲のひとつ。元Uncle Jamms Army。現在も現役で活動中です。歌詞を要約すると「ピラミッドきれい、女の子もかわいい、ダンスフロアは俺のビートで大盛り上がり、エジプト大好き」。

■ World Class Wreckin Cru - Surgery

今や押しも押されぬトッププロデューサーのDr. DreがN.W.A.結成前に所属していたエレクトログループ。このDr. Dre自己紹介ソングの歌詞によると、Dr. Dreの「Dr.」はミックス学の博士号だそうです。

■ Arabian Prince - Innovator

元Bobby Jimmy & The Critters、元Uncle Jamms Army、そしてN.W.A.の創始メンバー。昨年Stones Throwからベスト盤がリリースされました。この曲にはDr. Dreが客演しています。ここまでの３曲を聴けば、Kraftwerkがエレクトロヒップホップに与えた影響がいかに大きいかがわかります。

■ J. J. Fad - Supersonic

Arabian PrinceとDr. Dreが中心になってプロデュースした女性ラップグループJ. J. Fadのヒット曲。グラミー賞にノーミネートされた最初の女性ラップ曲です。

■ Uncle Jamm's Army - Dial-A-Freak

当時の西海岸エレクトロシーンの顔役でもあるRoger Claytonが結成したグループで、パーティーを母体としたゆるやかな共同体。今回ピックアップしたアーティストのほとんどがメンバーとして名を連ねています。この曲のプロデュースはEgyptian Lover。

■ Ice T - Body Rock

元祖ギャングスターラッパーのIce Tも、デビュー当時はエレクトロざんまい。映画「Breakin' （邦題：ブレイクダンス）」の１と２に出演。今は俳優さんとして活躍中です。

■ Chris "The Glove" Taylor & Dave Storrs - Itchiban Scratch

Chris "The Glove" TaylorはDr. Dreの名盤「The Chronic」と「Aftermath」にミキシング担当としてクレジットされている人物。Dave Storrsは「Mickey」のToni Basilのバンドメンバーで、レコーディングエンジニア。

■ Kid Frost - Terminator

Ice-Tを取り巻くElectrobeat Crewの一員で、ラテン系ラッパーの草分け的存在。トラックを作ったのは上の"Itchiban Scratch"のDave Storrs。

■ Unknown DJ - 808 Beats

元祖匿名DJ。Techno Hopレーベルのオーナー。この曲のドラムが曲タイトルに反してTR-808っぽくないのはエレクトロ７不思議のひとつです。

■ Bobby Jimmy & The Critters - We Like Ugly Women

この曲をプロデュースしたのはEgyptian Lover。面白ラップで大人気だったBobby Jimmyは後にラジオDJに転身して大成功、今では自分の本名を冠した全国放送の朝帯ラジオ番組のメインパーソナリティーです（→番組サイト）。

ドラッグ売人Eazy-Eの旗の下にN.W.A.が結成されて「Straight Outta Compton」がリリースされたのが1988年。この年が西海岸ヒップホップの「初期」が終わった年だと言われています。電子音とナンパとブレイクダンスの幸福な時代が終わり、ギャングスターラップの時代の幕開けです。

さて、エジプトが揺れる今、Egyptian Loverは何か気の利いたコメントの一つもしていないものかと彼のTwitterのアカウントを眺めましたが（→@thegyptianlover）、ほとんどがNBAのロサンゼルスレイカーズを応援するツイートでした。