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2011年06月27日 08:36
スウェードの最高傑作はこれです / Dog Man Star (2CD+DVD) - Suede
「フィル・スペクターとデビッド・ボウイがルー・リードの家で出会う」。
90年代に活躍したイギリスのロックバンドSuede(スウェード)の全アルバムがリマスター、デラックスエディション+DVDの3枚組で再発されました。自分は1994年発売のセカンドアルバム「Dog Man Star」を予約購入。
とにかくSuede登場のインパクトは凄かった。声を裏返して歌う女性物のシャツを着た口の悪いボーカリスト、歌詞はセックスのことばかり、くどい程にポップで古臭いイギリスの伝統的ロック、聴いてて恥ずかしいくらいに歌うハードなギター、インディーバンドなのにジーパンTシャツなんてメンバーが一人もいない。当時の若かった自分には衝撃的で、新しい音楽体験でした。
Suedeの代表作としては、話題性という点で1枚目のアルバム「Suede」、ヒット曲という点で3枚目のアルバム「Coming Up」が紹介されることが多く、この2枚目のアルバム「Dog Man Star」はセールスで失敗したこともあって取り上げられることの少ないアルバムですが、Suedeのベストなアルバムはどれかとなれば、迷うこと無くこのアルバムを推薦します。
自分たちの作る世界に疑問を抱いていては鳴らせない大袈裟で力強い音です。1994年のイギリスのバンドの音とは到底思えない頽廃的でヘヴィーでサイケデリックでポップなロック。深いリバーブとギリギリの緊張感。このギリギリ感は1stと3rdでは聴くことができません。絶頂期と破綻期を同時に迎えたバンドのみが鳴らせる音です。もし90年代イギリスロックの代表アルバムを選考する会が開かれるなら、この「Dog Man Star」をねじ込むために釘バットを携えて会場へ乗りこみます。
今回のリマスターでは全体に3dbほど音圧がアップしていて、オリジナルよりギターが少々パワフルに聴こえます。曲によっては細かくミックスが変わっているものもあるように感じます(例:「Introducing The Band」の最初と最後のノイズが少し違う?)。Disc2にはB面収録のオリジナル曲が全て収録、カセットテープ録音のデモトラックや未発表曲などのおまけも充実しています。Disc3のDVDの目玉は1993年のライブ映像で、映像クオリティは海賊盤レベルの客席手持ち撮影ですが、このライブはバーナード・バトラー脱退前のもので、彼が「Dog Man Star」収録曲や「Stay Together」のギターを弾いている姿は大変貴重です。鬼気迫る荒々しいギターが聴けます。
ブックレットには幻の「Dog Man Star」トラックリスト初期案がのせられていて、そこには「Killing Of A Flash Boy」「The Living Dead」などのアルバムからこぼれたのB面名曲群がずらり。アルバムに入らない曲に名曲が多いのもバンドが充実していた証明です。
このデラックス再発、個人的には、10年以上ずっと中古レコード屋やオークション、動画サイト等でAリスト扱いで探し続けていたけど全く見つけられなかった一曲「Eno’s Introducing The Band」が収録されているのが何より嬉しくて、それだけで十分に価格以上の価値を感じています。ブライアン・イーノ大先生によるアルバムの一曲目「Introducing The Band」の16分にも渡るリミックスで、元曲のイントロの数十秒を引き伸ばしに引き伸ばし、ねじ曲げにねじ曲げたドロドロのアンビエントダブ!目の前に浮かぶ光景はモンゴルの大草原…これはたまりません。デビッド・ボウイからの影響が大きいSuedeですから、イーノに接近することでベルリン期のボウイ的な実験的な姿勢を吸収しようとしていたのかもしれません。その結果は音にしっかり反映されています。
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Review : 2011年06月27日 08:36
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