2012年01月12日 11:17

テクノ名曲夜話:いま明かされるThe Orb「Little Fluffy Clouds」誕生秘話

あなたが若かった時の空はどんな感じでしたか?

アメリカの音楽雑誌SPINのサイトに「It Was 20 Years Ago...」という20年前を振り返る月刊連載インタビュー記事が載っていて、これまでにMatthew Sweet、Chris Cornell、Naughty By Natureが登場して自身の20年前のヒット曲やアルバムを振り返っているのですが、今月のこの連載にThe Orbのアレックス・パターソン(Alex Paterson)と、サポートメンバーだったユース(Youth)が登場して、1990年にリリースされたThe Orbのヒット曲「Little Fluffy Clouds」について語っています。知らなかった面白い話がいくつもあったので一部翻訳してみました。拙訳失礼。

■ The Orb Look Back on 20 Years of 'Little Fluffy Clouds'(spin)

In the early '90s, "What were the skies like when you were young?" was the new, "Can you pass the acid test?" — the question that separated the turned-on from those left behind.

あなたたちが一緒に「Little Fluffy Clouds」を作っていたときの雰囲気について少し聞かせてもらえますか?

Youth:アレックスとジミー・コーティー(Jimmy Cauty)がKLFのアルバム「Space」のことで険悪になっていたんだ。当初アレックスが大量のサンプルやエフェクトを鳴らしていたんだけど、ジミーがそれを共同でリリースしようとしなかった。彼はアレックスがDJで「曲を書けないから」そうしていると感じていたんだ。KLFがKopyright Liberation Front(著作権解放戦線)を意味していることを考えると、ちょっとした皮肉だよ!コーティーはアレックスのサンプルを全部取り去ってからレコードをリリースしたんだ…これにアレックスは激怒したんだけど、突然コラボレーターが居なくなったアレックスは身動きがとれなくなった。そこに私が歩み寄ったんだ。

Alex:「Little Fluffy Clouds」はユースとジミーの直接的な競争だった。(ジミー・コーティーと作った)「Huge Ever-Growing…」はアンダーグラウンドなレコードとして驚異的な成功を収めた。そして、ジミーの場所にユースがやってきた。「よし、次の作品はお前と一緒に作る。俺達でさらに良いものを作るんだ…」こうして始まったんだ。

どうやって曲を書いてレコーディングしたのですか?

Youth:45 RPMという名前の小さなスタジオを持っていたんだけど、パルス音、いくつかのビート、808 State「Pacific State」からの奇妙なキーボードのサンプルなどを一緒にして、すぐにヴァイブを作り出した。Ricky Lee Jonesのサンプルも使っていて、サンプラーのAkai S-900を通すことで、どもっているようなエフェクトを作った。それは崇高なサイケデリアで、EやLSDでのトリップで起こりうる出来事から直接的にインスピレーションを受けていた。以前にこのデモのアイデアが浮かんだ時にアレックスに最適だと思っていたので、レコードとテープの入ったバッグを持った彼を連れてくると、彼はそのヴァイブにブッ飛んだ。すぐにエサに食いつくと、バッグからSteve Reichのギターのサンプルやいくつかのビート、BBCのダイアローグなどの数多くのアイデアを取り出した。

Alex:Cyclosonic panners(注:空間系エフェクター)もその日の作業だよ。本物のアンビエンスを使って、全く文脈外な他の音楽の断片からのアイデアを組み合わせて、音のスクラップを作るんだ。

Rickie Lee Jonesのサンプルはどこから来たんですか?

Alex:片面にSteve Reich、もう片面にRickie Lee Jonesが入っていたカセットテープからだ。ユースのバーミンガムの友人のサイモンからもらったものだ。

Youth:元々はプロモーション用パッケージの一部としてメディアに送るためのインタビューディスクなんだ。バーミンガムのサウンドトラック専門のレコード店に務めている友人がいて、彼は(Rickie Lee Jonesの)ファンだった。彼は詩人でもあって、彼のポエムが裏面に印刷された変な写真や、私の気に入りそうなスポークンワードとサウンドトラックのテープをよく送ってきた。

Alex:彼はThe Orbがそれを使ってトラックを作るべきだと考えていたんだ。サイモンは間違っていなかった。「新スタートレック(TNG)」でジョーディ役を演じていた男(レヴァー・バートン LeVar Burton)がTVショー(Reading Rainbow)でRickie Lee Jonesに「あなたが若かった時の空はどんな感じでしたか?(What were the skies like when you were young?)」とたずねる場面だ。

Steve Reichのトラックへの反応はどうでしたか?お金を要求されましたか?

Alex:Steve Reichが「Little Fluffy Clouds」を初めて聴いた時のことを語っているビデオを見たよ。彼は熱心だった。誇りに思っているみたいだったよ!彼が私達の仕事に感銘を受けたと信じている。彼は2003年に20%を要求してきた。未払い分の支払いは無しで、彼好みのバージョンを(作るように?)リクエストされた。

では、あなたが若かった時の空はどんな感じでしたか? どこに住んでいましたか?

Youth:私が若かった1960年代、スロー(Slough)の近くで育った。でも、明るい青空と美しい綿毛のような雲(fluffy clouds)を思い出すよ。とてもイングランド的で60年代的だ。私は今でも雲に取りつかれていて、雲のブログを始めたくらいだ(→Link)。

Alex:「おぉ神様、星がいっぱいだ」(小説「2001年宇宙の旅」からの引用)

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こんな感じです。

ユースとジミー・コーティーの間にあった競争関係という話も興味深いですが、謎の詩人サイモンのカセットテープが「Little Fluffy Clouds」の影の立役者だったという意外な事実には驚きました。何がきっかけで名曲が生まれるかはわからないものです。

最後に、WIkipediaにリッキー・リー・ジョーンズのダイアローグの書き起こしが載っていたので転載しておきます。アレックス・パターソンの娘のミドルネームはArizonaだそうです。

■ Little Fluffy Clouds(Wikipedia)

Interviewer: "What were the skies like when you were young?" Jones: "They went on forever – They - When I w- We lived in Arizona, and the skies always had little fluffy clouds in 'em, and, uh... they were long... and clear and... there were lots of stars at night. And, uh, when it would rain, it would all turn - it- They were beautiful, the most beautiful skies as a matter of fact. Um, the sunsets were purple and red and yellow and on fire, and the clouds would catch the colours everywhere. That's uh, neat 'cause I used to look at them all the time, when I was little. You don't see that. You might still see them in the desert."

News : 2012年01月12日 11:17

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