2012年12月25日 15:46

Kraftwerkが12年に及ぶサンプリング裁判で勝訴するも判決理由に疑問が残る

Kraftwerkが闘っていたサンプリング訴訟に判決が下されました。

■ Recording rights Metal bashing(economist)

TWO seconds of metallic music may seem a rather trivial basis for spending 12 years battling through the German courts. But that is what lawyers for Kraftwerk (pictured), an electropop band, and Moses Pelham and Martin Haas, two composers, have been doing.

Kraftwerkが訴えていたのは、1997年にSabrina Setlurというドイツの女性ラッパーが発表した「Nur mir」という曲を作った2人のプロデューサー、Moses PelhamとMartin Haas。

Sabrina Setlur「Nur mir」がサンプリングしているのは、Kraftwerkのアルバム「Trans-Europe Express」に収録の「Metall auf Metall(Metal on Metal)」という曲の中の2秒ほどのフレーズ。

2000年に裁判開始、2004年にハンブルグの下級裁判所でKraftwerk勝訴の判決が出るものの、2年後に上級裁判所で敗訴、そして最高裁判所に上告されて、今年12月13日に再びKraftwerkの勝訴ということで結審しました。

この裁判、2008年にmyspaceが運営していたニュースサイトが記事にしているのを参照して自分のブログでも記事にしてるんですけど(記事:Kraftwerk サンプリング訴訟で敗訴「2秒の抜粋では著作権を侵害しない」)、このmyspaceのニュースだと2008年に「ベルリンの最高裁判所」で結審してるような書き方になっていて、裁判が終わったものと勘違いして記事にしましたが、裁判は終わってませんでした。すでにmyspaceニュースの記事は削除されていて、その記事のソースも発見できず。原典にあたることの大切さを再確認。

で、最高裁判所が出したKraftwerkの勝訴の理由ですが、判決文に議論を呼びそうな一節があって、いろんな音楽ニュースサイトにそこを突っ込まれています。複数の英語のサイト( )がドイツ語の判決の文言を抜粋して英語に訳して記事にしていますが、それらの大意をまとめるとこういう感じです。

許諾なくサンプリングする行為は、サンプリングをしたアーティストがそのサンプリングした音の持つ効果を自分自身で再現できない場合にのみ許可される。被告のMoses PelhamとMartin Haasは、曲を作った1996年当時の音楽機材で原告Kraftwerkの"Metall auf Metall"を再現することが可能だった。だからサンプリングをすることは許されない。Kraftwerkの勝訴。

「サンプリングをしたアーティストがそのサンプリングした音を自分自身で再現できない場合にのみ許可される」というのを理解するのが難しいのですが、その音を鳴らしたのが誰なのかが聴き手に明確に伝わってなければいけない、ということでしょうか? ドイツの裁判所によるドイツの法律についての判断なので、日本に住む自分の生半可な法知識でどうこう言える問題では無いですが、それにしても解釈に困る曖昧な判決だなとは思いました。今後訴訟になるたびに再現可能かどうかを裁判官が判断するのでしょうか?

今回の裁判では、1996年頃に広く使われていたAKAIのサンプラーを法廷に用意して、その場で金属音をサンプリングして「Metall auf Metall」を再現できるかどうか、というようなデモンストレーションがおこなわれたそうです。その結果、被告の2人は「Metall auf Metall」を再現することが可能だと判断され、だから(許諾無しで)サンプリングをすることは許可されない、という論理だそうです。

裁判に負けたMoses PelhamとMartin Haasの弁護士は、この判決は憲法の「表現の自由」を侵害しているとして、最高裁判所の上の連邦憲法裁判所というところに上告することを検討しているそうです。

News : 2012年12月25日 15:46

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