matsu & take

Autechreの11枚目のアルバム。

何が素晴らしいって、トータルタイム2時間で17曲もAutechreの新曲を聴けるっていうところです。CDにして2枚組、アナログなら4枚組のボリューム。ちょうど良い曲順と曲間でAutechreの新曲を2時間連続で聴き続けるという体験。なんと素晴らしい。60分のアルバムを2回連続で聴いても、iTunesでAutechreの曲だけで長時間のプレイリストを作っても、この体験は得られません。

BPM90程で12分ジワジワ盛り上げる「bladelores」や、サンプリング音が荒っぽく連打されるヒップホップ「deco Loc」、唐突に爽やかでダンサブルな「T ess xi」、ヒリヒリした電子音がパラパラと崩れ落ちる最終曲「YJY UX」あたりが特に気に入りました。

さすがにまだYouTubeに音が全然無いので、iTunes Storeの試聴ウィジェットを貼っておきます。

もともと今作「Exai」は3月の発売が告知されていたものが、突然1ヶ月前倒しでiTunesとBleepでのデジタル音源の配信が開始されました。自分はどうしたかというと、BleepでCDを予約しました（→bleep）。BleepでCDかアナログを予約すると、予約したその瞬間からデジタル音源がBleep経由で無料ダウンロードできるのです。しかも、320kbpsのMP3データだけでなく、16bit/24bitのWAVデータも無料でダウンロードできるという太っ腹。CD無しの24bit WAVだけの値段は12.99ドルで、CD2枚組＋24bit WAVだと15.99ドル（と送料2ドルほど）。自分にとってCDという容器に一体何の意味があるのか、ちょっと考えてしまいました。

というわけで、手元にまだ現物は無いものの、24bitのWAVという通常のCD以上の高音質で「Exai」を聴いています。MP3と簡単に聴き比べたりしてますが、正直言って自分の環境では違いはよくわかりませんでした。「WAVのほうがステレオの広がりが…」「残響の厚みが…」などと、どこかで聞きかじった情報をさも分かったように書きつづりたい気持ちもありますが、ブラインドテストをパスできる自信はまったくありません。

自分は彼らの全11枚のアルバムやEPをすべてしっかり聴いてるわけではなく、試聴して「今作はよくわからんなー」でパスした作品がいくつもある程度（00年代のパス率高し）のAutechreのファンです。そんな自分が聴いて、今作はバランスがちょうど良いと思いました。全編通してビートも格好いいし、メロディーも美しいし、電子音も気持ち良かったり痛かったり。キャリアを総括する重厚な大作アルバムというよりも、むしろ気負いの無さを感じさせる、風通しの良いアルバムです。

ビートはヒップホップ寄りの曲が若干多いくらいでしょうか。ダブステップっぽいテンポの曲が何曲かありますが、ダブステップからの影響はほとんど感じられず。遅い曲ばかりでなく、アップテンポで騒々しい「spl9」のような曲もあります。そして、それらの曲が1曲の中で何度も変形を遂げて、なんとも形容しがたい音の塊と化して飛び出してくるという、いつも通りのAutechreに2時間どっぷり浸れます。