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2013年09月24日 10:57
イタロディスコだけじゃない、80年代イタリアの電子音楽・ポストパンクのコンピ / Mutazione. Italian Electronic & New Wave Underground 1980 - 1988
イタロパンク。
80年代イタリアのアンダーグラウンドな電子音楽やニューウェーブ・ロックを集めたCD2枚組のコンピレーション。編纂したのはKompaktからリリースしてるイギリスのテクノ系アーティストWALLSの片割れ、Alessio Nataliziaさん。「Mutazione」というのはイタリア語で、Mutation、突然変異という意味だそうです。
イタロディスコ華やかなりし80年代のイタリア、同時代に存在したテープ交換やファンジン(TRAX)を中心に形成されていたDIYなイタリアの電子音楽のシーンを掘り下げた、とても珍しいコンセプトのコンピレーション盤です。収録された26組のアーティスト、どれひとつとして名前を聞いたこともありませんでしたし、イタリアにこういうシーンがあったことも知りませんでした。
Throbbing GristleやSuicideなど、英米のポストパンクの中でも尖っていた人達からの影響を色濃く感じさせるような、アルバムカバーのおどろおどろしいイメージどおりの曲が多く収録されています。
小さな字でぎっしり書かれたライナーノーツや、このアルバムについてのネット上のレビューなどを辞書片手に頑張って読んでますが、どこどこ在住の何とかさんが何に影響されてどのシンセを使って、という音楽マニア向けの情報だけでなく、「元首相が誘拐されて殺害された」だとか「テロリストに駅が爆破されて何十人も亡くなった」だとか、右派と左派の対立で混乱していた80年代前後のイタリア(“リード時代”と呼ばれてるそうです)の政治絡みの怖い事件についての言及が多くあって、イタリア現代史の基礎知識がある人の政治的な思考を刺激する選曲になっているようです。
実際、タイトルや歌詞、サンプリングの中には直接的・間接的に政治を取り上げたものがいくつもあって、アルバム全体を覆う鬱屈したムードが当時のイタリアのムードと直結していると思うと、何も知らなかった80年代イタリアのポストパンクのシーン以上になんにも知らなかったイタリアの戦後史に対して強い興味が湧きました。混乱した社会から生み出された若者の音楽はだいたい素晴らしい。
Review : 2013年09月24日 10:57
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