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2014年04月19日 16:49
音は凄く良くなったけど“極性修正”のおかげなのかは正直よくわからない / Skylarking - Corrected Polarity Edition - XTC
和解の日は遠い。
XTCの1986年アルバム「Skylarking」のPolarityをCorrectedしたEditionが2010年の限定アナログ盤に続いてCD盤でもリリース。ジャケはアナログ盤と同様に当初の案どおりの陰毛ジャケ。
Corrected Polarity Edition(極性を修正したエディション)ということで、「これまでにリリースされていたバージョンは極性が逆になって位相が狂っていたので修正しました」ということなのだそうですが、「スピーカーの接続が左右逆でした」「マルチトラック上でパンの設定が逆でした」みたいなわかりやすい話ではなく、「マスタリング時にXLRプラグの極性の接続が逆でした」というような、ちょっと敷居の高い話のようです。
■ XLRタイプコネクター(Wikipedia)
現在のところ、平衡回路の接続において標準的なコネクタとなっている。マイクロフォンの接続用として最もメジャーになっているが、その他にもスピーカー接続用、デジタル伝送用、アナログオーディオ伝送用などの種類がある。(略)3極コネクタによる音声の平衡接続に於いて信号線の正相(HOTと呼ぶ)を2番ピンにするか3番ピンにするかは長い間混乱していたが、AESにより1992年に2番ピンをHOTとすることで規格化(AES14-1992)され、以降は2番HOTが国際標準となった。
この辺の問題のようですが、はっきりとはよくわかりません。そもそもリリース当時にプロのマスタリングエンジニアや製作した本人達が聴いて判別できなかったわけですし(アンディは「録音時に聴いていたのより音が薄くてベースが軽い」とずっと感じていたそうですが)、今回のリマスター作業中に問題を発見したというマスタリングエンジニアのJohn Dentによると「このエラーは世の中のアルバムの4枚中1枚で起こってる」ことらしいので(→Twitter)、自分が気にしても仕方無いレベルの事柄なのかもなと思いました。
アンディは「Skylarking」の極性エラーについて「(アルバムをプロデュースした)トッド・ラングレンがスタジオで誤配線したことが原因」というようなことを各所で発言しているのですが、この発言に対してトッド・ラングレンは、彼の研究本「トッド・ラングレンのスタジオ黄金狂時代 魔法使いの創作技術」の著者ポール・マイヤーズのブログ(→link)に「アンディが何か言ってるらしいが、自分は最初のマスタリングには関わったが、その後レーベルとバンドがDear Godを削除することを決めてマスタリングをやり直しているので、リリースされているバージョンには関わっていない」というような感じの、節々にトゲのあるコメントを投稿しています。エラーの存在についても懐疑的なスタンスのようです…。
とはいっても、これまでのオリジナルバージョンと今回のCorrected Polarity Editionはハッキリと音が違います。でも、それは極性のエラーを修正したからではなくて、イコライザーなどで音を調整したことによる部分が圧倒的に大きいと思います。これまでのバージョンは低音が弱くて高音が強い、いかにも80年代中期的な音だと感じていましたが、今回のリマスターでは低音が補強されて、高音のキラキラ(シャリシャリ)感は薄まり、全体に少しステレオ感が増したように感じました。音圧もかなりアップしています。無理に歪ませている感じはなく、ごく自然な印象で、自分は今回のリマスターの音を気に入りました。
自分の愛聴してきた「Skylarking」は92年に「Nonsuch」リリースにあわせて全アルバムが日本で再発された時のバージョンで、そのバージョンには「Dear God」が入っていません。今回「Dear God」がどのような流れでアルバムに入っているのかを楽しみに聴いたのですが、「Dear God」のアウトロと次の曲「Dying」のイントロがミックスされているのにはド肝を抜かれました。「Dear God」が元々入っていたバージョンのアメリカ盤もこういう処理がなされていたそうです。時計の音だけが鳴る「Dying」の静かなイントロが大好きだったので、これは聴き慣れるのに時間がかかりそうです。
現在アンディは「Drums And Wires」の5.1ch版の制作に取り掛かっているとのことです。
Review : 2014年04月19日 16:49
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