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2011年07月09日 10:22
ラップする変なピアニスト / The Unspeakable Chilly Gonzales - Chilly Gonzales
誰がこれを聴きたいの?
カナダ出身パリ在住、曲がiPodのCMに使われ(→YouTube)、プロデュースした曲(→Link)がグラミー賞候補にもなった、プロデューサー・ロッカー・ピアニスト・ラッパーと多彩な顔を持つゴンザレスさんのニューアルバム。自身のラップとピアノがフルオーケストラと共演!
前作「Ivory Tower」ではBoys Noizeをプロデュースに迎え、ガッチガチのエレクトロビートに乗せてラップ&ピアノしていたゴンザレスですが(ラップをするときには別ペルソナ「Chilly Gonzales」になるらしい)、今作「The Unspeakable Chilly Gonzales」にはエレクトロビートは全く無し。オーケストラとのガチンコ対決です。
オーケストラのアレンジを担当しているクリストフ・ベック(Christophe Beck)は「ハングオーバー」「ベガスの恋に勝つルール」「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」「オフロでGO!」などなど、シネコンの端っこで小さくかかっている気のいいハリウッド映画を中心に音楽を数多く手がけている人物です。オーケストラとラップという組み合わせ、これまでにも有るには有る組み合わせですが、ここまでしっかり「豪華な生演奏」以上のことをやろうとしている例は珍しいのではないでしょうか。
ラップの内容も皮肉が効いていて面白いです。「Who Wants To Hear This?(誰がこれを聴きたいの?)」「Shut Up And Play The Piano(黙ってピアノ弾いてろ)」のタイトルからもわかるようにかなり自虐的。なぜ自分がラップしているのかを自問自答する「Rap Race」など、アメリカのラップの物真似ではない独自のラップを切り拓こうという意志が伝わってきます。
ゴンザレスはこのアルバムのリリース前に「Pianist Envy」という"ミックステープ"的なものをネットで配信しています。これがかなり面白くて、テクノ・R&B・ラップの名曲に自分のピアノを乗っけて完全に別曲にしてしまう試みです。こちらでメール登録してダウンロードできます(→Link)。下の動画はその中の一曲、Daft Punk「Rollin' & Scratchin」VS ゴンザレスです。
とにかく変わった人で、2009年にはソロアーティスト長時間連続演奏でギネスに挑戦して、27時間3分44秒という世界記録を作りました。下の動画はその時に演奏されたJustice「D.A.N.C.E.」のカバーです。
他にも、アメリカのロッカーAndrew W.K.とピアノ対決するという公演もありました。下の動画は、ピアノ対決を25分程度にまとめたものです。
一進一退の激しい攻防の末、最後にはネックレスをAndrew W.K.に投げつけて演奏を妨害するという卑怯な攻撃でゴンザレスの勝利。
こういった「人としての面白さ」が十分に音に現われている「The Unspeakable Chilly Gonzales」です。
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Review : 2011年07月09日 10:22
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