2010年01月17日 23:12

かいじゅう稼業も楽じゃない / かいじゅうたちのいるところ

スパイク・ジョーンズの映画です。

[映画/レビュー]
タイトル : かいじゅうたちのいるところ
脚本・監督 : スパイク・ジョーンズ
原作 : モーリス・センダック
上映時間 : 101分
出演者 : マックス・レコーズ 他

モーリス・センダックの名作絵本をスパイク・ジョーンズが実写映画化。

サム・ライミが「スパイダーマン」で成し遂げたように、ピーター・ジャクソンが「ロード・オブ・ザ・リング」で成し遂げたように、名作絵本を原作に持つこの「ファミリー向け」映画で、ついにスパイク・ジョーンズも?と思ったら、なんのことはない、いつものスパイク・ジョーンズの映画でした。

母親と喧嘩して家を飛び出し、かいじゅう達の住む島にやってきた少年マックス。ひょんなことからかいじゅうの群れに王様として迎えられることになり、分裂しつつあったかいじゅう達の結束を取り戻すべく、王として奮闘します。かいじゅうとともに野を越え山を越え大冒険を繰り広げるようなタイプの話ではありません。ピクサー映画を見に行く感覚で子供と一緒に楽しもうとしている人は再考を。まず「マルコビッチの穴」「アダプテーション」を思い出して下さい。

原作では絵から想像していただけだった、かいじゅうたちの個性が、映画ではしっかり描かれています。かいじゅうの造形は表情以外はCGではなく、飛んだり跳ねたりメチャクチャよく動く着ぐるみを作ったのは、ジム・ヘンソンの工房です(思い出すのは80年代の名作ファンタジー「ラビリンス」)。

かいじゅう達の人間性(かいじゅう性)は着ぐるみの動き同様に妙に生々しくて、なぜかかいじゅうの群れには倦怠ムード、ギスギス感が漂っています。明快な理由があるわけではなく、先行きの見えない不安感だったり、長く一緒に居すぎて何かうまくいかないという感覚だったり、そのわかりにくさ、曖昧さが実に人間的です。

かいじゅうたちのいるところ image人間関係の難しさにブチ当たって、孤独感いっぱいで現実から飛び出してきたマックスでしたが、たどりついたかいじゅうの住む島は、夢のパラダイスでもなければ、恐怖のジュラシックパークでもなく、そこには人間社会の別バージョンがあるだけ。結局、非現実の世界の中でも人間関係(かいじゅう関係)に悩まされることになります。特にマックスの一番の友達となるキャロルというリーダー格のかいじゅうが、嫌になるくらいに人間臭い奴で、感情的で頑固て、そのために周囲とうまく関係が築けず、徐々に仲間の中から孤立していきます。孤立する中で彼が見せる「なんでわかってくれないんだ」という理不尽な怒りに、現実社会でマックスが感じていた母親への想いを重ね合わせて強く胸を打たれるわけですが、世界中の子供が愛する絵本をネタに、相手を思う心の行き違い的なテーマをしっとりと描いてどないすんねん、とは思ってしまいました。案外子供は大人が思ってる以上に、スっと受け入れられるのかもしれませんが。

この映画で一番いいと思うのは、なんやかんやあって家に戻ってくるマックスが、ドラえもん映画でののび太のように、なんらかの教訓をつかみ取って大人になって帰ってくるわけではなく、公園で犬を追い回して石投げつけて遊んだくらいの感覚で帰って来ているだろうというところです。「あー、つかれたつかれた、なんで喧嘩したんだっけ」くらいの感覚。この程度の冒険、子供ならみんな毎日やってますよ。こどもはかいじゅう。

Review : 2010年01月17日 23:12

ブックマーク

Yahoo!ブックマークGoogleBuzzurlニフティクリップlivedorr clipdel.icio.usはてなブックマークかいじゅう稼業も楽じゃない / かいじゅうたちのいるところのはてなブックマーク数

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL :
http://www.spotlight-jp.com/matsutake/mt/mt-tb.cgi/421

このエントリーへのトラックバック :

「かいじゅうたちのいるところ」絵本の世界そのまんま、映像は美しい [soramove]

「かいじゅうたちのいるところ」★★★☆ マックス・レコーズ、キャサリン・キーナー、マーク・ラファロ主演 スパイク・ジョーンズ監督、101分 、 201...

2010年01月29日 20:24