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2013年04月01日 09:47
有りそうであまり無かったJBの伝記本(解説文は井筒監督) / ジェームズ・ブラウン - ガリマール新評伝シリーズ
世界の傑物。
ジェームズ・ブラウンの伝記本。掘っ立て小屋で生まれて売春宿で育ち、クリスマスに亡くなるまで。
2010年に祥伝社という出版社が社の40周年を記念して発刊した 「ガリマール新評伝シリーズ―世界の傑物」という伝記本シリーズの中の一冊なのですが、ジェームズ・ブラウン以外のシリーズの面々が凄くて、そこに興味をひかれて読んでみました。ケルアック、ルイ16世、フェリーニ、チェーホフ、カミュ、ドゴール、そこにジェームズ・ブラウンという並びです。JBの伝記本は86年に自叙伝「俺がJBだ!」が出ていますが、Amazonを検索する限り、評伝的な本(日本語で読めるもの)は存在していないみたいです。
このシリーズはフランスのガリマール社が発行してる伝記シリーズの中から、現代の日本人にアピールしそうな作品をピックアップして翻訳したものだそうで、当然このジェームズ・ブラウンの本もフランス人がフランス人に向けて書いたものです。外部の視点から書かれているためか、伝記の主役と著者の距離感がベッタリになっておらず、ほど良い熱さでジェームズ・ブラウンの波瀾万丈の人生に触れることができます。
読んで驚いたのは、ジェームズ・ブラウンとドラッグの関係です。海外ミュージシャン伝記本ではおなじみのテーマです。晩年のジェームズ・ブラウンが妻へのDVなどで何度も警察の厄介になっていたのはリアルタイムで知っていましたが、やはりその背後にはドラッグがあって、PCP(通称エンジェル・ダスト)という強い幻覚剤が含まれたマリファナを常用していたそうです。こういった陰の部分もしっかりと描かれています。ダークヒーローとしてのJB。
ダークヒーローという意味では、彼がいかにしてFred WesleyやMaceo Parker、Bobby Birdといった人々を統率してきたのか、本書ではJBの人心掌握テクニックの数々が紹介されていて、これも読みどころのひとつです。ジェームズ・ブラウンのバンドには厳しい戒律があって、ステージで失敗したメンバーから罰金を取っていたというのは有名なエピソードで、こうした戒律に反発してバンドを辞める人々、新しく入ってくる人々、出戻りする人々、この辺のこともしっかりと書かれています。
ジェームズはのちに、ヴィッキーが在籍した1965年から68年の短い時期が、少なくともボーカルの面ではグループの最盛期だったと言っている。しかし、こうした名誉と称賛がグループのメンバーに贈られたのは30年近い年月を経た後のことであり、その陰でメンバーが流した涙と味わった苦痛には計り知れないものがあった。ジェームズの鉄拳はメンバーを威圧した。彼らは、時間を守ること、服従すること、立ち去る前に跡を綺麗にすることを義務付けられた。ジェームズはバスの中に持ち物を置き忘れたメンバーを叱責し、運転手に命じて忘れ物はゴミ箱に捨てさせた。ジェームズの要求は神経症の域に達していた。
巻末の解説を書いているのは井筒和幸監督です。ネットで解説の全文が公開されています(→Link)。映画「ゲロッパ」を撮ったことから解説の依頼が行ったんだと思いますが、特に何か面白い考察やエピソードが書かれているというわけでもなく、文中の監督の一人称がカタカナの「ボク」だということだけが強く印象に残りました。
Review : 2013年04月01日 09:47
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